監修してくださったのは…渋谷の森クリニック 藤井 美香子先生
2008年に岩手医科大学医学部を卒業。東京慈恵医科大学附属病院での勤務を経て、聖路加国際病院やJCHO東京新宿メディカルセンターなどでの診療に従事。現在は渋谷の森クリニックに勤務。日本形成外科学会認定 形成外科専門医。
妊娠中の肌管理に慎重になるべき3つの理由
胎児への「催奇形性(さいきけいせい)」のリスクがあるから
最大のリスクは「催奇形性」。内服薬によっては、お腹の赤ちゃんに、形や機能の障害(奇形)を引き起こす性質があります。
そもそも、妊婦を対象とした臨床試験(実験)は倫理的に不可能であり、少しでもリスクが否定できないものは「禁止」するのが医学界のルールです。
母体の肌質が「別人」のように変化するから
妊娠中はホルモンバランスが大きく変化します。
妊娠中でないときには問題のない施術も、肌バリアの低下などによって過剰な刺激になることがあります。
万が一の際、「原因の切り分け」ができなくなるから
施術後に何かトラブルが起きた際、それが「妊娠による自然な変化」なのか「美容医療の副作用」なのか、医師でも判断がつかなくなる場合があります。
「受けてもいいの?」「ネットでは問題ないと書いていたけど…」と思うかもしれませんが、いかなる場合も、カウンセリング時に必ず妊娠中であることを伝えましょう。
また、妊娠中はホルモンバランスの変化も起こる時期です。肌荒れや肝斑の悪化など普段よりもリスクを考え、ケアを選びましょう。「塗るだけだから」「部分的な注射だから」と自己判断で受けるのはNGです。
妊娠中のNG肌管理
イソトレチノイン (内服薬) | ボトックス (注入施術) | トレチノイン・ 高濃度レチノール系 (外用薬) | |
効果 | おもにニキビ改善や皮脂分泌、肌の状態を整える目的で、ビタミンA誘導体を使用 | 表情ジワや部分痩せ、汗や皮脂の分泌抑制などの目的に使用 | シミや細かいしわの改善、毛穴の開きや黒ずみの改善、ニキビやニキビ跡の改善を目的に使用 |
避けるべき理由 | 催奇形性(胎児の奇形)の可能性があるため | ボトックスがヒトの精子や卵子に影響を及ぼす可能性があるため | 脂溶性ビタミンは体内に蓄積されやすい性質があり、過剰摂取は胎児への影響が懸念される |
休薬期間 | 薬の成分が体内に長く留まるため、服用中だけでなく、服用終了後も最低半年から1年(※医師の判断による)は避妊を継続する必要あり。 女性だけでなく、男性が服用する場合も注意が必要。 | 女性はボトックス注射を打ってから月経が2回来るまで、男性は打ってから3か月間の避妊が推奨されている。 | 妊活中、または妊娠が判明した場合は、直ちに使用中止が推奨される。※種類や濃度によってリスクの程度が異なる |
危険度 | 大 | 中 | 中 |
肌管理以外の美容医療は?
GLP-1受容体作動薬(リベルサス、サクセンダなど)の服用は厳禁
もともとは糖尿病の治療薬ですが、ダイエット効果を得ることを目的に「メディカルダイエット」として処方されることが増えているリベルサスやサクセンダなどの成分についても、妊娠中は厳禁です。
動物実験においても、胎児の成長遅延や骨格異常が報告されています。
そもそも妊娠期は、ダイエットよりもお腹の赤ちゃんのために適切な栄養摂取が優先されるべき大切な時期でもあります。
これらの成分は体内に長く残るという特徴もあります。そのため、妊娠中の方だけでなく、これから妊活を始める(避妊をやめる)方も、少なくとも2ヶ月前には使用を中止しなければなりません。知らずに飲み続けてしまうことがないよう、注意が必要な薬剤の一つです。
美容外科施術は原則不可
二重埋没や鼻の形成、脂肪吸引といった外科的な処置を伴う施術は、妊娠中すべての期間において避けるべきです。
最大の懸念は、施術に不可欠な局所麻酔や、術後に服用する痛み止め・抗生物質です。これらの薬剤が胎盤を通じて、お腹の赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があります。
また、施術そのものによる緊張や身体へのストレス、術後の痛みは、母体のホルモンバランスを乱し、結果として胎児の発育に悪影響を及ぼすリスクも否定できません。さらに、妊娠中はむくみが出やすいため、正確なデザインが難しくなります。
脱毛(医療レーザー・エステ脱毛)も基本的にNG
身近な美容ケアである「脱毛」も、基本的に多くのクリニックやサロンでは妊娠がわかった時点で施術をストップします。
妊娠中はホルモンバランスの変化により、普段より痛みを感じやすく、火傷や毛嚢炎(毛穴に細菌が入り、ニキビのように赤く腫れる状態)といった肌トラブルのリスクが上がるためです。
歯列矯正は継続できるが、慎重に判断を
歯列矯正はすでに開始している場合、基本的には継続が可能です。
インビザライン(マウスピース矯正)についても、つわりがひどくなければ可能です。
新たに歯列矯正を始める場合は、妊娠していない時と比べると注意する点やリスクが増えるため、積極的には推奨されないことが多いです。
妊娠中ならではの歯列矯正にまつわる注意点がいくつかあります。
まず、妊娠中はホルモンバランスの影響で『妊娠性歯肉炎』になりやすいということです。
矯正器具がついていると口腔ケアが難しくなり、歯ぐきのトラブルが悪化しやすいため、より丁寧なメンテナンスが求められます。
そのほか、つわりの時期や精密検査・抜歯にも注意の必要がある点も挙げられます。
つわりがひどい時期は、口の中に器具があるだけで不快感が増したり、十分な歯磨きやケアができなくなったりすることがあります。歯磨きが行えない場合は、マウスウォッシュなどを併用して無理のない範囲で清潔を保ちましょう。
最後に、麻酔や痛み止めが必要な抜歯や、精密診断のためのレントゲン撮影も、胎児への影響を考慮して制限されることが一般的です。
まずは歯科医師に妊娠の事実を伝え、体調に合わせたプランを相談してみましょう。
今、これならできる!OK施術のご紹介
「保湿・鎮静」施術なら可能性あり
バリア機能が低下しがちな妊娠中の肌。
電気の力で有効成分を届けるため、肌への負担を抑えつつ潤いを与えられるイオン導入やエレクトロポレーションなどの導入施術は、受けられるクリニックもあります。
マタニティOKのドクターズコスメに切り替え
レチノールなどの「攻め」の成分をお休みする代わりに、妊娠中でも比較的使いやすい成分をプロに相談して取り入れてみましょう。
例えば、ビタミンC誘導体はシミ・くすみ対策を目的に、アゼライン酸は妊娠期特有のニキビや赤みのケアを目的に取り入れることができます。
妊活・授乳中の美容医療は?
休薬期間を正しく知る
先ほどのGLP-1受容体作動薬やイソトレチノイン、ボトックスのように、成分が体内に長く残るものもあります。
「避妊をやめる2ヶ月前には中止する」など、具体的な休薬期間を必ず担当医に確認しましょう。
妊娠の可能性を必ず伝える
「まだ確定ではないけれど、もしかしたら…」という段階でも、カウンセリング時には必ず伝えてください。
妊娠の可能性を前提に、より安全なプランを一緒に考えることができます。
授乳中の薬剤移行
産後も、母乳を通じて赤ちゃんにお薬の成分が移行する場合があります。施術内容や処方薬が授乳に影響しないか、事前の確認が欠かせません。
まとめ
妊娠という大きな変化のなかで、これまで通りの美容ができなくなることに不安を感じるかもしれません。
まずは、今のあなたと赤ちゃんを守るために正しく情報を得ることが大切です。
美容をすべて「我慢」するのではなく、今の身体に負担をかけない選択肢を「しっかり選んでいく」こと。
プロの力を借りながら、無理のない範囲で自分を労わってあげてくださいね。




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