眼瞼下垂の原因と治療とは?切らずに行う手術や費用についても解説
「最近まぶたが重い」「なんだか目が開きにくくなった」という人は、もしかしたら眼瞼下垂という疾患かもしれません。
多くの原因は加齢によるものです。年々視界が狭くなることによって見えにくかったり、頭をぶつけたり、まぶしくなったりと、日常生活に支障が出るほどであれば治療が必要です。
そこで今回は、眼瞼下垂が起こる原因や治療法などについて解説していきます。
この記事の監修者:山本 豊
山本クリニック
東京医科大学卒業後、東京医科大学大学院修了。東京医科大学外科学第一講座、自由が丘クリニック勤務後、ニューヨーク大学形成外科に留学。その後、山本皮フ科形成外科勤務、昭和大学病院形成外科にて研修を行い、独立開業。
このドクターについて詳しく見る眼瞼下垂とは?
眼瞼下垂とは、上まぶたが垂れ下がった状態を指します。
上まぶたを上下させる筋肉の端には、「腱膜」という腱がつながっています。主な原因として、この腱膜が伸びたり、切れてしまったりすることで、まぶたがしっかり上がらず、瞳の一部が隠れてしまうのです。
眼瞼下垂の原因
眼瞼下垂には、先天性と後天性があります。
先天性の場合
先天性眼瞼下垂の場合は、生まれつきまぶたの筋肉やそれを動かす神経が発達していないことが原因と考えられています。
軽度の場合には経過観察で成長を見守ることになります。重度の場合や、弱視や斜視の原因となっていると考えられる場合は、手術を行います。
後天性の場合
後天性眼瞼下垂の場合は、多くは加齢による腱膜や皮膚の異常が原因です。筋肉や神経の異常が見つかる場合もあります。
加齢のほかには、花粉症やアレルギーでまぶたをこすることによる刺激、コンタクトレンズの長期使用、白内障や緑内障といった目の既往症が挙げられます。
重症度の判断
眼瞼下垂の重症度の判断は、黒目上の白目が見える状態を正常とし、黒目と瞳孔にどの程度上まぶたがかかるかで軽症、中等症、重症と区別されます。
区別 | 上瞼の縁の位置と黒目(角膜)の距離 |
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正常 | 2mm下まで |
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軽症 | 2mmより瞳孔寄りに下がる |
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中等度 | 瞳孔にかかる |
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重度 | 瞳孔の中央より下がる |
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中等度、重度では、視野が暗くなり、生活に支障をきたすため治療の対象となります。
偽性眼瞼下垂の場合は別の病気が原因
偽性眼瞼下垂は、ほかの病気によってまぶたが開きにくくなっている状態です。まぶたの腱膜の異常による眼瞼下垂とは異なります。
例えば、顔面痙攣やまぶたの痙攣、まぶたの皮膚がたるむ眼瞼皮膚弛緩症などがあります。
圧倒的に多いのは、まぶたの皮膚のたるみによるものです。この場合は邪魔になっているまぶたの皮膚や脂肪を取り除く(眼瞼余剰皮膚切除術)ことで症状を解消します。
眼瞼下垂の症状
眼瞼下垂になってまぶたが開きにくくなると、次のような症状が見られるようになります。
いつも顔を上げてものを見なくてはならず、頭痛や肩こりがする
このほかにも、自律神経のバランスが崩れることによる気分の落ち込みといった症状も報告されています。
では、眼瞼下垂と診断された場合の手術とはどのようなものなのでしょうか。
眼瞼下垂の手術とは?
眼瞼下垂の手術は主に3種類あり、症状の程度によって手術法が決まります。
眼瞼挙筋短縮術 | 眼瞼挙筋を短くして瞼板に固定する |
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眼瞼挙筋腱膜短縮術 | 伸びた眼瞼挙筋腱膜を瞼板に再固定する |
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前頭筋吊り上げ術 | 先天性眼瞼下垂でまぶたの筋肉が正常に動かない場合、おでこの筋肉とまぶたの筋肉を連結させる |
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簡単にいえば、まぶたを動かすおおもとの筋肉と、まぶたを上下させる腱膜を、それらがつながる瞼板と再固定する手術です。
これらの手術時間は、片目が30分程度、両目で1時間が目安となります。いくつかの手術を組み合わせて行う場合は、手術時間が2時間ほどになることもあります。
眼瞼下垂の手術は、まぶたの開き具合や、左右の対称を確認しながら行う必要があり、基本的に局所麻酔で行われます。
そのため、日帰り手術も可能です。ただし、片目だけだと思われた眼瞼下垂が、実は両目ともだったということも多く、その場合は入院をすすめられることもあります。日程に余裕をもって受診するようにしましょう。
眼瞼下垂の手術は、眼科、形成外科、美容外科で行われます。
切らずに行う手術もある
眼瞼下垂の状態が軽度の場合は、糸による埋没法を行う場合があります。メスを使わない手術です。
まぶたの裏側から眼瞼挙筋とミュラー筋(腱膜の後ろ側にある筋肉)を一緒に、極細の糸で織り込んで縫い付けることで、まぶたの開きを改善します。
このほか、まぶたの表面を切らずに、まぶたの裏側からミュラー筋を短縮し開閉機能を修復するCMMR法(結膜ミュラー筋切除術)を行っているクリニックもあります。
眼瞼下垂のダウンタイム
眼瞼下垂の手術を受けると、まぶたの腫れやむくみ、内出血による青あざができることがあります。おおよそ2週間から1か月ほどで落ち着きます。
術後の抜糸は、5日〜1週間後に行います。
眼瞼下垂の手術費用
眼瞼下垂の手術は、健康保険が適用される場合と、適用されない場合があります。
健康保険が適用される条件や費用、また適用外となってしまう理由や、そのときの費用について解説していきます。
健康保険「適用」の場合
眼瞼下垂は病気のため、眼科や形成外科を受診してください。手術が必要な状態だと診断された場合は、保険適用で1割または3割負担で手術を受けることができます。
美容外科でも手術を受けられますが、病気の治療というより見た目の改善が目的となるため、健康保険は適用されません。
保険が適用された場合の眼瞼下垂の手術費用(両目)の目安は以下の通りです。
1割負担 | 15,000円~20,000円 |
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3割負担 | 45,000円~60,000円 |
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健康保険「適用外」の場合
眼瞼下垂の症状改善のほか、術後の見た目をきれいにしたい場合は、美容外科の受診をおすすめします。
ただし、その場合は保険適用外となるため、費用は高額になります。
眼瞼下垂手術(両目) | 350,000円~900,000円 |
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二重埋没法 | 7,000円~300,000円(糸でとめる数により価格は異なる) |
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CMMR法(両目) | 約250,000円 |
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眼瞼下垂の予防法
後天性の眼瞼下垂の多くは加齢によるものです。日常生活での行動に注意を払うことで眼瞼下垂を予防することができます。
どのような点を注意すれば良いのか見ていきましょう。
ハードコンタクトレンズの長期使用を控える
ハードコンタクトレンズの長期使用は、眼瞼下垂のリスクを上昇させる可能性があります。
毎日のハードコンタクトレンズの出し入れによるまぶたへの刺激や、1日中コンタクトレンズを装着した状態で瞬きをすることによる、眼瞼挙筋の腱膜やミュラー筋への影響が原因と考えられます。
ハードコンタクトレンズを使用する場合は、装着時間を短くし、眼鏡を併用するようにしましょう。
アイメイクは薄めに
アイラインやアイシャドウ、マスカラ、まつ毛エクステ、つけまつげなど、濃いアイメイクを毎日すると、メイク中やメイク落としの際に、まぶたを刺激することになります。
つけまつげをつけたり、ビューラーでカールしたりするときは、必要以上に引っ張らないようにしましょう。また、アイメイクを落とすときはごしごしこすらず、やさしくふき取るようにしましょう。
かゆくても目をこすらない
花粉症によるかゆみや目の疲れを感じても、なるべく目をこすらないように気をつけましょう。症状に対応する目薬をさすようにすると、まぶたへの刺激を軽減することができます。
特に花粉症やアレルギー症状が出た場合は、つい目をこすりたくなりますが、冷やしたり目薬を使用したりして対処するようにしましょう。
パソコンやスマホの使用を減らす
現代において、スマートフォンやPCなどの利用する機会は非常に多いでしょう。しかし、画面を長く見続けると、目の周りの筋肉や視神経は疲労してしまいます。
視力にも悪影響となるため、使用する時間は極力減らし、意識して目を休めるようにしましょう。
まとめ
眼瞼下垂は、まぶたが垂れ下ることで視野が狭くなったり、肩こりや頭痛の原因となったりする病気です。眼科や形成外科では、保険適用で手術を受けることができます。日常生活に支障が出てきたら、早めに受診して適切な治療を受けるようにしましょう。
日頃から、まぶたへの刺激を減らすことも大切です。